巻頭言
CEOのメッセージ:新年の目標と着地点
読者の皆様
最初にこの紙面をお借りして皆様に新年のご挨拶を申し上げます。皆様にとりまして新しい年が幸福と繁栄、そして安らぎの年となることを心よりお祈り申し上げます。2020年は個人の生活においてもビジネスの世界においてもまことに厳しい現実に直面した1年でしたが、今年は全てが着実に改善され前進できる年であることを望んでおります。
現在の破滅的な感染爆発の状況下でも一筋の光明を見いだす努力を怠らなければ、私たちが学び取ったものは決して消えることなく永続的な宝物になることでしょう。昨年を振り返って私の心に浮かぶのは復元力、結束、適応力などのキーワードです。
この状況下で従来にも増してデジタル化、情報処理の高度化、即応化、認識の充実などが進んできましたが、テキスタイル業界もその方向に大きく進化しています。
COVID-19の激烈な感染爆発はその兆候の当初から世界のテキスタイル産業に影響を及ぼしていました。様々な産業分野の中でもテキスタイル産業はグローバル化が非常に進んだ分野であり、そのサプライチェーンが数か国に渡ることは珍しくありません。そして感染爆発によってファッションアイテムの消費は大幅な低下に見舞われています。国際繊維製造者連盟(ITMF)の調査では2020年4月初めの時点ですでに31%の受注がキャンセルされています。
そのような状況下ですが、当社の多くのお客様は生産品目を防護用素材や隔離用素材に転換し、バクテリアやウイルスを防ぐ素材の開発に注力するなど、英知を集めてこの危機に果敢に立ち向かっておられます。当社はそのようなお客様を全力で支援し、マスクや防護衣料、高度な機能素材の製織用に織機を迅速にカスタマイズするお手伝いが出来ていることを誇りに思っています。
多くのお客様では、当社も同様ですが、デジタル技術を活用した働き方や会議の方法を採用されています。コミュニケーション、サンプルや新コンセプトのプレゼンテーションなどはリモートで実施され、移動の頻度が大きく削減されています。イテマでは製品とサービスの接続性向上とデジタル化を強力に推進しています。
コロナ禍により先行きの読めない現在ですが、私はテキスタイル産業の未来は明るいと見ています。それは、この業界は必要となれば上記のような機動的な対策で製品や製造工程を劇的に変化させことができる能力を有しているためです。そして持続可能性と企業の社会的責任(CSR)は、繊維や織物生産についての様々な論議の中で中心的な位置を占めて来ています。地球環境保護に適合し、倫理的に正しく、そして持続可能な生産を実現することで、テキスタイル業界の未来は必ず明るいものになると信じています。
2020年のイテマグループについて申し上げれば、この難局に対処する経験を通じて社員の力が増大し企業力がさらに高まったと言えます。業績も希望の持てる結果で、織機の販売は前年2019年の4%増の売上を達成しました。特にトルコでの販売が好調で、家具用やカーテン生地、寝具などのホームテキスタイル製造の分野から多くの発注をいただきました。当社はこの分野で長年に渡って製織技術の開発に投資し、最先端のテクノロジーを注ぎ込み、織機業界をリードして来ています。
さらに年初でも継続して受注残を有し、2021年も良好な業績が見込まれます。そして当社の一連の戦略目標が、お客様をはじめとする関係者の皆様にとっても最大限の価値を提供できることを最終的な着地点と考えています。
Red Dot Newsの2021年冬季号では、テクノロジーのコーナーでItematechの統合完了をお知らせしていますが、Itematechの事業活動は2021年1月1日にイテマ社に移管されています。当社はテクニカルファブリックなどの特殊分野は大きな将来性が有ると考えていますが、この統合は、テクニカルファブリックと特殊なスタイルの製織に特化した研究開発に注力する当社のそのような積極的な姿勢を象徴しています。イテマはItematechをフルに活用して同社の従来からのお客様を継続してサポートし、最先端の製織テクノロジーと先進的なソリューションを提供して行きます。詳細は記事をご覧ください。そして今号からの新シリーズ「エキスパートに聞く」ではラディチグループのテクニカルヤーンと持続可能性についてご紹介しています。
個人の生活もビジネスも全般的なデジタル化が進む現状を私達は目の当たりにしていますが、その現状を踏まえて、当社は高度で革新的な最新の内容の教育コンテンツを持つ訓練プログラムをスタートさせました。
Itema Academy Digitalプログラムの詳細とそこで学ぶ有能な若者達を、この記事で紹介しています。
イベントのコーナーではコロナ禍の現状で多くの展示会が中止になり、充実した内容をお知らせすることができませんが、2021年に開催される展示会が有れば積極的に参加して行く所存です。数少ない展示会の中で当社が参加した中国での二つの展示会をご紹介しています。そのひとつはイタリアデザイン展(Italian Design Icons)で、招待客限定ではありましたが、上海で開催されメイド・イン・イタリーの先端テクノロジーをご覧いただきました。そしてイテマのニュースのコーナーでは当社についてのマスコミ報道を掲載しています。また、SNSで振り返るイテマの2020年でSNSへの主な投稿をご紹介しています。
ウィービング エクセレンス ダイアリーでは当社の世界中の様々なお客様を紹介していますが、今回はハイエンドのシルク製織の専門メーカーでイタリアに本拠地を有するSampietro社 にご登場いただいています。
Red Dot Newsの今号の最後はイテマグループの2021年カレンダーです。PCの壁紙としてご使用いただけるデジタルフォーマットでご提供しています。このカレンダーにはイテマ本社の所在地であるベルガモのオロビエ アルプスの美しい山々の写真を掲載しています。これらの写真はイテマの社員であるクラディオ・ランザが撮影したものです。月替わりで表情を変える美しい山の風景をお楽しみください。
これからも継続してお届けするRed Dot Newsをご愛読いただきますようお願いいたします。
イテマグループCEO
ウーゴ・ギラルディー